技術情報


焦点距離を求める計算方式


使用するカメラの撮像サイズ、被写体の寸法、レンズ先端から被写体までの距離(=W.D)が決まっている場合は、以下の式に当てはめて、最適な焦点距離の理論値を導き出すことが出来ます。得られた解を目安に、レンズを選択することが可能です。

<計算式>

f = y' × WD / y


f :焦点距離
W.D:レンズ先端から被写体までの距離
y :被写体の縦寸法
y' :撮像サイズ(垂直)

弊社カメラ撮像サイズ
 
IUC-130WCN2
IUC-130WCK2
IUC-130CN2
IUC-130CK2
IUC-130CN3
IUC-130CK3
IUC-200CN2
IUC-200CK2
IUC-300CN2
IUC-300CK2
撮像サイズ 6.66 x 5.32 mm 5.4 x 4.3 mm 6.72 x 5.04 mm 6.59 x 4.90 mm

レンズの選定

一般的には、主にマクロレンズ系のレンズと無限遠系のCCTVレンズ、ラインセンサー用マクロレンズなどがあります。

マクロ系にはテレセントリックレンズ(テレセントリック光学系)と非テレセントリックがあります。

マクロレンズの大半が近接域(数十mm~300mm以下)のWD(Working Distance:被写体までの距離)で最大性能が得られるように設計されています。


1.テレセントリックレンズ

主光線がレンズ光軸に対して平行なレンズです。

同軸落射照明を要する場合物体側テレセントリックレンズが有効です。

被写体に対して垂直な照明の正反射光を受講するのに有利です。

被写界深度方向の寸法計測で数値の変動が激しく、周辺がほとんどゆがまない為、高精度計測に向きます。

結像位置での被写体の光学像の大きさがレンズから被写体までの距離(WD)には影響しないという特徴があります。

但し、視野が大きくなればなるほどレンズサイズが大きくなり、高価になります。


2.マクロレンズ

近接(被写体までの距離WDが100mm前後)の撮影用に光学設定を行ったレンズです。

たとえば数mmオーダの対象を高いズーム比率で撮影できる物があります。

テレセントリックレンズより小型で、検査用途などに幅広く採用されています。


3.CCTVレンズ

もともと監視用に開発されたレンズで、WDは無限遠まで対応できる設計となっています。

大半が絞りやフォーカスの調整ができ、明るさの変更やピントの調整が容易です。

価格が安い為、使用頻度は高くなっています。

但し、近接で使用する場合周辺の歪みが大きく、寸法計測には不向きです。

接写リングとリヤコンバータレンズ


1.接写リング

主にCCTVレンズで近接撮影する際にレンズとカメラの間に装着する補助リングです。

カメラとレンズの間を離すことでレンズのピント位置(WD)が近接域になります。

視野範囲も必然的に小さくなります。


2.リヤコンバータレンズ

レンズとカメラの間に装着して、WDを変えずに簡単に倍率を上げる(視野範囲を小さくする)補助レンズです。

但し、倍率が上がれば明るさは低減します。(1/レンズ倍率の2乗分低減)


マウント方式の選択

レンズとカメラの装着部はネジサイズやフランジバック(FB:取り付け面から焦点面までの距離)に応じマウント方式が異なります。

エリアセンサーカメラではフランジバック(FB)が17.526mmのCマウントが一般的で、セキュリティー用のカメラにはFBが12.50mmのCSマウントがあります。

ラインセンサーカメラはカメラメーカに依存した方式があり、比較的多いFマウントはFBが46.5mmですが、他にもM72マウントなど様々なマウントがあり、採用するカメラに適合するマウント方式のレンズを選択する必要があります。

たとえばCマウントタイプのカメラにはねじサイズは同じですがFBの違うCSマウント用のレンズは使用できないのでご注意下さい。

現在、直径φ7~17mmのカメラ側オスネジタイプや20mm角程度の小型カメラもあり、これらはカメラメーカにより独自の規格のFBやネジサイズのマウントが採用されています。

また、カメラによってはたとえばCマウント方式を採用していても、カメラ内部にフィルターや機構的な干渉物があるため、レンズ側の出っ張りなどが干渉し取り付けられない場合がありますので、レンズ及びカメラのメカニカルバックを確認する必要があります。


カメラの撮像素子サイズの留意点

レンズの選定においてカメラの撮像素子サイズに適合する物を選択する必要があります。

撮像素子より小さい適合素子サイズのレンズを選ぶと、中央部分のみ撮像され、周辺部が撮像されずに黒くなる現象「けられ」が発生します。


用語解説


■口径比

レンズの有効口径で光を有効に通す口径と焦点距離の比をいいます。

■アイリス

レンズの絞りのことです。

■フォーカス

ピントのことです。

■バックフォーカス

レンズ最後端から焦点面までの距離です。

■焦点面

レンズやミラーなどの光学系の主軸に垂直で、焦点を通る平面です。

レンズによって透過してきた軸上の像が最良の先鋭焦点をもたらす点です。

■フランジバック

レンズ交換式のカメラにおいて、レンズマウントのマウント面から、撮像素子面までの距離のことです。

■包括角度

イメージサークルをカバーするレンズの見込み角のことで、角度の単位"度"で表示されます。

■ディストーション

レンズを通した像の歪みのことです。

■TVディストーション

理想上の形状に対し、実際の長辺方向の曲がり具合を100分比で算出した値をいいます。

■Cマウント

Cマウントとは、現在主にFA用途レンズで多用されているねじ込み式マウントです。

内径25.4mm(1インチ)、ピッチ0.794mm(32山/1インチ)、フランジバック17.526mm。

■焦点距離

光学系の主点から焦点までの距離です。

■テレセントリック光学系(Telecentric Lens)

主光線がレンズ光軸に関して平行なレンズをいいます。

物体側テレセントリック、像側テレセントリック、両側テレセントリック等の方式があります。

■主光線

開口絞りの中心を通過する光線を指します。

■開口絞り

レンズ系において、光線束を制限する絞りです。

明るさ絞りともいいます。

■視野

使用カメラで見える物体側の範囲

■テレセントリシティー

テレセントリィティーとは物体の奥行き方向に対する倍率誤差が少ないほどテレセントリシティーが高いといわれます。

■N.A.(Numerical Aperture)

物体側開口数N.A.といい像側開口数をN.A.'といいます。

■開口数

レンズの分解能を求めるための指数です。

■分解能

2点をどこまで分離して見られるかの感覚を表します。

0.61×使用波長(λ)/N.A.=理論分解能(μ)

上記計算式で理論上の分解能が示せます。但し、光学的収差は含まれておりません。